日本のラグジュアリー不動産市場で起きている最大の変化は、価格が上がったことではありません。購入者と比較対象が世界へ広がったことです。東京のマンションはロンドンやニューヨーク、香港、シンガポールの住宅と比較され、ニセコのコンドミニアムは海外のスキーリゾートと比較されるようになりました。本稿では、この構造変化と、投資判断で見落としてはならない点を整理します。
日本の「高級住宅」の基準はどう変わりましたか?
かつて日本で高級住宅といえば、東京都心の一等地にある広いマンションや邸宅というイメージが強いものでした。しかし現在、ラグジュアリー不動産を評価する物差しはそれだけではなくなっています。
海外の富裕層も購入者として加わり、立地、眺望、建築、サービス、プライバシー、ブランド、そして「そこでしか所有できない」という希少性まで含めて価値が評価されるようになりました。
東京では「億ション」のさらに上の市場が形成されている
東京都心では、1億円を超えるマンションはもはや珍しい存在ではありません。注目すべきは、そのさらに上の市場です。
港区、千代田区、中央区などの都心5区では数億円から数十億円という住宅が供給され、従来の日本の住宅市場とは異なる価格帯が形成されつつあります。背景にあるのは建築費や土地価格の上昇だけではありません。国内外の富裕層を対象とした、住宅そのものの商品設計の変化です。
広い専有面積、高い天井、眺望、コンシェルジュ、バレーサービス、セキュリティ、フィットネス施設など、海外の高級住宅では珍しくない仕様やサービスを備える物件も登場しています。日本の高級マンションが「日本国内で高級な住宅」から「世界の富裕層が比較して選ぶ住宅」へ変わりつつあるということです。
海外から見ると日本の不動産価格はどう見えますか?
東京の住宅価格は日本人から見れば大幅に上昇しています。しかし、ニューヨーク、ロンドン、香港、シンガポールなど世界の主要都市でラグジュアリー住宅を探している購入者が東京を見る場合、評価は必ずしも同じではありません。
さらに為替が円安方向に動けば、外貨を保有する購入者にとって日本の不動産価格は相対的に低下します。ここに、日本人と外国人の間で価格に対する感覚の差が生じます。
ただし「外国人から見れば日本の不動産は安い」と一括りにすることには注意が必要です。為替は変動するうえ、不動産の流動性、税制、管理、賃貸利回り、将来の売却先なども投資判断に影響します。購入価格が相対的に安く見えることと、投資として割安であることは別の問題です。
ラグジュアリー市場は東京だけではない
もう一つの変化が、ラグジュアリー不動産市場の地域的な広がりです。その代表例がニセコです。
世界的なスキーリゾートとして認知されるようになり、住宅やコンドミニアムは日本国内の所得水準だけでは説明しにくい価格で取引されるようになりました。
これは重要な変化です。不動産価格は通常、その地域の人口、所得、賃料など地域経済との関係で形成されます。ところが世界の富裕層が購入者になると、その不動産は地域内の物件ではなく、海外のリゾート不動産と比較される商品になります。
同じ現象が今後、京都、軽井沢、沖縄などでもどこまで進むのかは注目すべきポイントです。
「住宅」と「ホテル」の境界も薄くなっている
世界のラグジュアリー不動産市場を見るうえで欠かせないのが、ブランドレジデンスです。高級ホテルブランドなどが住宅の企画やサービスに関与し、居住者がホテルに近いサービスを受けられる住宅を指します。
購入者が買っているものは、単なる「○平方メートルの区分所有マンション」ではありません。ブランドへの信頼、サービス、セキュリティ、コミュニティ、そして所有すること自体の希少性まで含めた商品です。日本でもこうした考え方を取り入れた住宅が登場し始めており、従来のマンションとは異なる市場が形成される可能性があります。
高額だから「良い投資」とは限らない
ラグジュアリー不動産を投資商品として見る場合には注意も必要です。
例えば5億円の住宅が6億円になったからといって、今後も同じペースで上昇するとは限りません。高額になるほど購入できる層は限定され、一般的な住宅とは売却時の買い手の厚みも異なります。
また、賃貸した場合の利回り、管理費、修繕積立金、固定資産税などを考慮すると、インカムゲインを目的とした一般的な収益不動産とは投資特性が大きく異なる場合があります。
したがって、「値上がりしている不動産」と「投資価値の高い不動産」を区別して考える必要があります。これはラグジュアリー市場を見る際にも重要な視点です。
日本の不動産が「世界の商品」になる
日本のラグジュアリー不動産市場で起きている最大の変化は、価格が上がったことだけではありません。購入者と比較対象が世界へ広がったことです。
東京のマンションがロンドンやニューヨーク、香港、シンガポールの住宅と比較され、ニセコのコンドミニアムが海外のスキーリゾートと比較される。そうなれば、日本国内だけを見て価格の高低を判断することも難しくなります。一方で、海外から資金が流入する市場だからこそ、為替や海外景気、国際的な資金移動の影響も受けやすくなります。
日本のラグジュアリー不動産市場は今、「日本で最も高い住宅」を競う市場から、「世界の富裕層から選ばれる不動産」を競う市場へと変わり始めています。この変化が一時的な価格上昇なのか、それとも日本の住宅市場に新しいカテゴリーを定着させるのか。今後のラグジュアリー不動産市場を見るうえで、最も注目したいポイントです。
よくある質問
円安のときに日本の不動産を買うのは有利ですか?
外貨を保有する購入者にとって、円安は購入時の実質負担を軽減します。ただし為替は変動するため、購入価格が相対的に安く見えることと、投資として割安であることは別の問題です。流動性、税制、管理コスト、賃貸利回り、将来の売却先まで含めて判断する必要があります。
ブランドレジデンスは通常のマンションと何が違いますか?
高級ホテルブランドなどが住宅の企画やサービスに関与し、居住者がホテルに近いサービスを受けられる点が異なります。購入対象は専有面積だけでなく、ブランドへの信頼、サービス、セキュリティ、コミュニティ、所有すること自体の希少性まで含まれます。
ラグジュアリー物件は売却しにくいのですか?
高額になるほど購入できる層は限定されるため、一般的な住宅と比べて売却時の買い手の厚みは異なります。購入時点で将来の売却先を想定しておくことが重要です。
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